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2012.11.21-25 at Takamatsu

 11月21〜25日に香川県・高松市立ヨット競技場で「第41回全日本470級ヨット選手権 兼 全日本女子470選手権」が開催されました。
 本大会は「JSAF2013年度470ナショナルチーム選考」「2013年470ジュニア世界選手権代表選考」を兼ねています。
 41回の歴史を持つ470全日本ですが、四国で開催されるのは初めてです。不況の影響もありこの10年ほどエントリー数は低迷していましたが、遠方にもかかわらず77艇と多くの参加を集めることができました。これは水域予選の時期から日本470協会と香川県ヨット連盟が共同で、「高松で開催の全日本に行こう」などのPR物で参加を促していたこと、そしてレース公示の参加規定に「過去の470全日本、470女子全日本の歴代優勝者」に出場権利を与え、トップセーラーを多く集めることで大会の魅力度がアップしたことが要因だと思われます。
 歴代優勝者枠のなかで注目されたのは、アテネ五輪の銅メダルチーム、関一人・轟賢二郎の復活参戦、北京五輪代表のスリーボンドの松永鉄也とチームアビームの吉田雄悟のチーム、ロンドン五輪代表の近藤愛と高校生の深沢瑛里のチーム、同じくロンドン五輪代表の原田龍之介と早稲田の後輩、今井 充のチームなどです。

全日本470選手権初日(22日)

 大会初日は朝から風が弱く、陸上待機になり、昼を過ぎても風がまったく吹く気配がありません。ここで470協会の新理事で元ナショナルチームの渡邊哲雄理事の提案で、関一人、松永鉄也、近藤愛、吉迫由香、原田龍之介、吉田雄悟らオリンピック選手による講習会が企画されました。選手達は、4グループに分かれ、五輪選手の艤装方法やレースの戦い方などをレクチャー。普段、オリンピック選手と接触する機会の無い学生選手など、熱心に話しを聞いてメモを取ったり質問したりで、大変良い機会になったようでした。
 講習が熱心に進められ、この日はこれで終了と思われましたが、講習会が終わりに近づいた午後2時半過ぎに、北東方向から風が入ってきたので急遽出艇になりました。

 予選は4つのグループの組み合わせで2つのフリートに分け、毎レース組み合わせを変えておこなわれます。15時55分、微軽風のなか、短めのコースでスタートし、1レースを消化しました。
 この日のトップ4は、出道・東野組(同志社大学OB)、松永・吉田組(ThreeBond/アビームコンサルティング)、村田・高木組(同志社大学/エフエスユニ)、大曲・田口組(長崎バスセーリングチーム)でした。

全日本470選手権2日目(23日)

 予選の予定は2日間で、予選の成立には2レース以上の成立が必要になます。ところが2日目も朝から雨で高松沖は視界が悪く、さらに風がないというコンディションのため、昨日と同様に陸上待機となりました。
 このままレースができずに3日目に予選が延長されるかと思われましたが、昼過ぎに風が吹き始めて出艇、レース海面に着く頃にはフルトラッピーズまで風が上がりました。運営サイドは良い風の中でスタートを狙いますが、この海面特有の強い潮がスタートラインを押し上げる形となり、五輪選手以外はラインからほとんどが出てしまうようなスタートが繰り返され、なかなかレースができません。
  2回のゼネリコ後に黒色旗のスタートで4回のAPを繰り返すことになり、そのうちに風は序々に弱まり、結局スタートできたのは、最初のスタート予告から約1時間後、14時5分でした。その後、風はさらに弱まって微風になり、選手は強い潮でマーク回航やフリーのコース取りに苦しみながら何とかレースが成立しました。
 風向が南よりにシフトして陸からの微風がかろうじて続く中、さらにもう1レースを実施し、レースが終了した時には日が暮れていました。
 このような微風レースで原田・今井組、近藤・深沢組は、それぞれ後続艇を1レグ近く離してトップフィニッシュ。そのためにDNFが16艇も出る結果となりました。
 予選3レースが終わり、上位には、原田・今井組、松永・吉田組、飯束・八山組、近藤・深沢組、関・轟組などトップセーラーが入ります。続いて学生チャンピオンの土居・外薗組(日本経済大)、小泉・山近組(早稲田大・日鐵住金溶接工業)と、微風と強い潮のトリッキーな海面の中でも、実力のある選手が上位に顔を並べる結果となりました。
 その日の夜は、選手のほとんどが宿泊している銀星旅館でレセプションが行われました。
 五輪選手などトップセーラーも参加し、ロンドンオリンピックについてのインタビューや、レース映像の放映、ビンゴ大会などで、選手同士が交流しました。

全日本470選手権3日目(24日)

 この日から、上位39艇(ゴールド)、下位38艇(シルバー)に分かれて決勝シリーズがはじまりました。
 この日の高松沖は予選シリーズとは異なり、曇天で朝から順風が吹いています。
 朝のブリーフィングでは、斉藤レース委員長から、昨日のスタートで、ほとんどの艇がスタート時点でラインから出てしまっていたことなど、高松の強い潮への対処が不十分であることが指摘され、決勝レースではレース委員会として厳しく対応することが話されました。
 前の日のブリーフィングでは、コーチ・選手から、先にスタートしたグループと後のグループがレース中に交差してしまうので、レース形式を変えて対応して欲しいという問題
 提起があり、レース委員会が帆走指示書を変更し、アウター/インナーループのトラベゾイドコースを採用することになりました。
 このように運営サイドと選手とのコミュニケーションを密に取ることにより、レガッタのレベルが日々向上していったのは双方にとっても良いことだったと思います。

 この日は、3~6mの軽~順風のなか5レースを消化しました。風は安定して吹きましたが、相変わらず潮は強く、風の振れ、ブローの強弱のある難しいコンディション。それでもやはり上位で回航するのは、元五輪やナショナルチーム陣です。
 その中でも、松永・吉田組が特にスタート後の展開の巧さ、フリーでの一段上のスピードで抜け出し、2-3-1-1-2位、カットレースが3位と素晴らしく安定した成績で総合トップとなりました。

 予選レースでトップの原田・今井組は2レース目で19位のカットレースを作りますが、その後は松永艇と競り合うレースで2位につけます。近藤・深沢組はカットレースを作らない安定した成績で3位。また、土居・外薗組は学生チームながら1-4-5-20-3位とずば抜けた力を発揮し始め、4位まで大きくアップしました。
 5位は、石川・阿部組(トヨタ自動車東日本/横浜消防局)、6位は、飯束・八山組(エス・ピー・ネットワーク)と続きます。

全日本470選手権4日目(25日)

 大会最終日は快晴の朝を迎えましたが、残念ながら風は弱く、陸上待機。その後、昼前にいつもの北東風が入り出艇となりました。
           女木島
 この日の海面は昨日までの西側エリアのレース海面に風がなく、ハーバー近くでレースエリアを設定しました。上マーク方向に女木島があり、レース海面はその影響もあり、シフティーな風が吹いています。

 12時過ぎにレースはスタート。第1マークのトップ回航は今村・大嶋組(日本経済大)、続いて松永・吉田組が2位で回航しますが、ダウンウインドで今村組を抜き去り独走。その後はまったく不安のない走りでトップフィニッシュを飾り、最終レースを待たずに優勝を決めました。
 続く2レース目は松永・吉田組がDNCでハーバーに向かう中、13時過ぎにスタートしました。得点差からほぼ総合2位を手中にした原田・今井組が余裕のトップフィニッシュ。2位には前のレースで21位を叩き、このレースの結果によっては入賞圏外に落ちる可能性のあった飯束・八山組が入り、総合5位に入ります。
 また、昨日まで同点タイで総合3位・4位の近藤・深沢組、土居・外薗組の3位争いももう一つの見所でしたが、近藤組が1レース目で痛恨の19位を叩いてしまった一方、土井組は4位と好調をキープ。近藤組が最終レースで5点差以上、土井組を離さないと3位に入れない状況です。
 そのような中で2レース目は近藤組が踏ん張り7位、土井組は12位でフィニッシュし、何と最終成績も同点タイで、近藤・深沢組が総合3位、土居・外薗組が4位となりました。
 また、近藤組は全日本女子のタイトルも取りました。
 選手がレースから帰着すると、香川県ヨット連盟が用意してくれた豚汁がもてなしてくれました。昨日までは毎日、美味しいうどんの炊き出しをスタッフが用意してくれて選手の心と体を温めていましたが、最終日まで素晴らしいホスピタリティを発揮していただきました。
 また、夕方からハーバー大会本部前で行われた閉会式には、例年よりも遙かに多くの選手が参加し、表彰から最後の写真撮影まで盛り上がりました。これも地元の選手たちをもてなし、良いレースを実現しようとする姿勢を感じてくれたからではないでしょうか。

 来年の470級全日本は福岡小戸で開催されます。



LinkIcon成績表

LinkIcon全日本470公式HP

上位チーム

優勝 松永鉄也/吉田雄悟
女子優勝(全体3位) 近藤愛/深沢瑛里

2位 原田龍之介/今井充
4位 土井一斗/外蘭潤平